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RESEARCH WORKS
2017.04.25

カント哲学 2005

太田直道著『カントの人間哲学ー反省的判断論の構造と展開』

(晃洋書房、2005年、6000円)

 

カントは1790年代になって美学や、生命哲学、歴史哲学、政治哲学、宗教哲学、人間学など、多方面の思想を公表した。しかしこれらの後期思想は従来、あまりにも多方面なためか、批判哲学の応用と受け取られ、体系的に研究されてこなかった。ところがこの時代、カントは自身の批判哲学の存否を賭けてプロイセン政府と対峙し、持論を展開したのであった。とすれば、そのもつ意味は軽かろうはずがない。本書はそのような後期思想を一貫して捉えようとして、「人間への問い」の視点から「反省的判断力」に注目する。この判断力は、偶然的な出来事の生起する日常の生活世界に固有の営みであり、内面の奥行き(宗教)と外面の広がり(公民社会)をもつ。カントの人間哲学の中心にあるのは、偶然・個別から普遍へと反省的に希求する人格概念である。これは今日もっとも欠落しており、学び直す必要があると著者はいう。ここに、同じく「反省」に注目するにせよ、ドイツ観念論とも新カント派とも実存哲学とも異なる、独自の解釈が示されたと言うべきだろう。

 

(森下直貴 評)