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研究業績

RESEARCH WORKS
2017.04.25

死生学 2004

『生と死を考える 「死生学入門」金沢大学講義集』2005.3

細見博志編,北國新聞社,2004,262頁

 

金沢大学では全学部の1,2年生向けに総合科目を設けている。その中に,受講生が300人も殺到する人気授業,「生と死を見つめて−死生学入門」がある。その02年度と03年度の授業を基礎に編まれたのが本書である。この授業は学生側の発案に基づくものだそうだが,昨今の学生もけっして捨てたものではない。

授業のコーディネーター役の細見さんは,冒頭で「よく死ぬことはよく生きること」であるという深い知恵について,本書を通じて考え深めて欲しいと呼びかけている。それに応えるように,宗教・医療・社会の三つの柱から構成された本書には,講師として参加した各分野の専門家の充実した授業ぶりが再現されている。インド・仏教・日本を専門とする哲学者あり,緩和医療の現場で働く医師や看護師,法医学者あり,文化人類学者・社会学者・教育学者あり。これら講師の多彩な語り口はどれもみなとても平易で,授業の雰囲気をよく伝えている。学生の授業コメントの採録も効果的だ。

最近では,大学の授業科目でも出版物でも,生と死をテーマにしたものが増えてきている。それだけ世の人々の関心が高まっている証左だろう。本書はその中にあって特別に異色というわけではない。むしろ,とても地味で普通である。しかし,類書と比べると,金沢という土地柄がにじみ出してくるような,地に足がついた趣がある。読んでいてずしりと心に響く重量感もある。それに何よりも,それぞれの講師が生死に対する関心を異ならせつつ,専門家であることをはみ出して「自分」を語っており,死を見つめることが今を個性的に生きることにつながるだと,諄々と語り掛けているところが魅力的である。

わたし自身も大学で類似の授業を担当している身だが,振り返って学ぶところが多かった。一般の読者の方にも,本書をぜひ手にとり,授業に参加しているつもりで,「よく死ぬことはよく生きること」の含蓄を味わってみることをお薦めしたい。